社内承継
私たちは、社内にいる親族関係の無い生え抜きの幹部社員や役員の中から適任な次期社長を選んで事業を承継することを『社内承継』と呼びます。
私たちの調査で、後継者又は後継者候補がいると回答した8割近くの社長たちのうち、約2割が社内承継を考えておりました。
社内承継を検討される経営者が増える傾向にありますが、社内承継には親族内承継とM&Aの両方の側面を持ち、
その両方の難しさと、社内承継固有の課題があります。
社内承継のメリットと留意点
メリット |
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留意点 |
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※しんきん支援ネットワーク事業承継実態調査
道内6つの信用金庫職員が約半年をかけて、2,000人以上の経営者から個別のインタビュー方式でデータを収集。本レポートはそのデータに基づいた「経営者の生の声」のレポートとなっております。
社内承継のポイント
1.社内承継は親族承継の身代わりでも、M&Aの代替手段でもない!
- 圧倒的に多くの経営者が親族の者に大切な事業を引き継いでほしいと願っています。
- でも、子息子女や甥姪などに後を継ぐ者がいないときや親族に継がせる自信がないときに、社内の生え抜きの信頼を寄せる役員社員の中から継ぐ者を求めようとします。
- 「親族には継がせられないからといっても、M&Aはよくわからないし抵抗がある。気心の知れた腹心の部下ならば安心だ」そんな消極的な理由から社内承継を選択していませんか?
- 社内承継を決断する前に、子息子女の意思を明確に確認しておきましょう。承継は後継者の人生を変える出来事です!
2.社内承継の適正人材の抜擢が肝心!
- 仕事のできる者が経営者に向いているとは限りません。どんなに優れた人材も実は会社経営を知らないものです。
- 経営者の仕事は他人を動かして成果を上げることです。つまり、見るべきは「リーダーとしての資質」です。
- 後継者に大切なのは「仕事上の技能や実績成果より人格的能力」であり、必要なのは「リスクを背負う事業意欲」です。
3.株式等の承継は簡単ではない!
- 継がれるべき会社、すなわち財務内容が良好で業績も健全な会社の株価は、間違いなく資本金の額を大きく上回っています。
- 一般には見合う資金を保有している例は少なく、借入金をして買い取り資金を調達するにも返済負担を考えると承継に後ろ向きになることもあります。
- 大きな経済的負担をかけずに後継者に株式を承継したいと、時価(相続税評価額)を無視して譲渡をすると思わぬ税負担が後継者にのしかかることがあります。それは「時価より著しく低い価格による売買」に対する贈与税です。
- 株式の売買価格や条件について、社長と後継者が本音かつ対等な交渉をするのには独特の難しさが伴います。税理士などの専門家に第三者としてアドバイスを求めるのが良いでしょう。
社内承継の標準的なプロセス(準備から実行まで)
1 | 承継に向けた決断(どの時期に現場を退くか?) |
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2 | 後継者候補の選定と育成(機会を与えてリーダーの資質を見抜く) |
3 | 後継者の特定と相互意思確認(当事者間の明確な意思と信頼関係の強化) |
4 | 社長交代に向けたスケジュールと体制作り(権限の委譲、経営判断の機会増加、社内のコンセンサス形成、次世代基幹人材の育成・新経営管理組織つくりなど) |
5 | 株価(企業価値)評価に基づく現社長の理解と承継の手法の選択・提示条件案の検討(財務内容や事業競争力・成長性などからみた企業価値評価に関する社長の理解、株式承継に関する手法の総合的検討と選択、役員退職慰労金及び株式譲渡価格など承継条件案や代表辞任後の会社との関係、役員退職慰労金の支給など) |
6 | 後継者への会社経営状況や企業価値に関する説明や協議(会社経営の状況、社長となることの責任や役割等について、企業価値や株価に関する説明) |
7 | 総合的な承継上の問題抽出や対策の検討から合意形成(中小企業同士の友好的なM&Aとほぼ同じ) |
8 | 株式譲渡等の各種契約や手続きの実施(税理士や司法書士等への手配など) |