事業承継のはじめ方

事業承継は社長自身のしっかりした意思で始めなければ、決して自然に始まるものではありません。ですから「はじめ方」が大切です。
放置していると、ある日突然社長の身に降りかかる不幸による予期せぬ「計画外の事業承継」が始まってしまいます。


人は誰も、自分がいつ病に倒れたり死を迎えたりするかを知ることはできません。
突然社長が倒れたら会社はその日からどうなるだろうかと、考えたことはありますか?

「自分に何かあれば息子か誰かが何とか継いでくれるだろう?」
それは、ここまで様々な困難を乗り越えて成長存続させてきた社長としては無責任と言わざるを得ません。家族または一族の長としてもです。
 もし、場当たり的事業承継でも会社が存続するとすれば、遺された役員や社員が強い愛社精神を持った能力と意欲の高い人材か、ともに働いてきた子息が強い責任感をもち、社員や周囲の人たちに支えられて立ち上がる場合などに限られるでしょう。

 それに対して、社長が自らの判断と行動で積極的に進めるものを「計画的事業承継」といいます。自分がいなくても事業ができるだけ混乱なく継続されるよう、様々な配慮や準備をすることです。この仕上げを完成させて、はじめて中小企業の社長の責務が全うされたといえます。
 親族や社内から後継者を選抜し育てられなければ、第三者に事業を引き継いでもらうしかありません。どれもできなければ、社長とともに事業も終焉を迎えますが、残された家族や社員たちに重荷を負わせたくないと思えば、自らの手で計画的に事業を閉じて会社を清算するしかありません。

未来を見据える

経営者という仕事は想像以上の体力と精神力、様々な不安やストレスに耐える能力が必要です。高齢な経営者ほどリスクを伴う決断や行動を避け、個人的にも苦悩を伴う状況を避けるようになります。上昇志向で長期的な視点を失い、短期的な問題解決に目を奪われるようになります。これでは、経営者が老いるのではなく、企業が老いてしまいます。
企業が老いるということは、未来に向けた可能性を失っていくということです。
未来を見据えた事業承継の実現には、下記のポイントが重要となります。

  • 今の収益力や競争力、その元となっている自社の事業の強みや個性・特長の再確認。
  • 後継者が担う将来を見通して長期的視点での見直し。
  • 後継社長とその時代に会社を動かし事業を進める人材の充足。
  • 長期的ビジョンや新たな戦略を見い出し、事業承継価値の磨き上げ。

事業承継には、十分な準備と相当の時間が必要です。

現状と課題を理解する

中小企業の事業承継は「経営」「同族」「所有」の三つ異なる性格を同時に持ちます。

「経営」
経験と実績の豊かな社長から経験不足の未熟な後継者に代わっても健全な経営が続くように願って考えられる経営課題に取り組む。

「同族」
大半の中小企業では社長とその同族関係者によって株式が所有され、役員や要職を占めていることも少なくない。

「所有(財産)」
同族関係者の想いや利害が複雑に繊細に絡む。

後継者に経営の実権を託して自らが退く覚悟を決め、その後に起きるだろう現実の困難や解決すべき諸問題を社長が懸命にイメージすることから事業承継の準備を始めます。

しんきん支援ネットワークに相談する

事業承継をはじめるにあたって社長がぶつかる最大の壁は、承継の手法を決めることです。私たちの調査では、73.7%の社長が「後継者または後継者候補がいる」と回答し、「後継者不在」は19.2%でした。後継者または後継者候補がいるという回答の内訳は「後継者は決まっている:48.3%」「後継者は決まっているが伝えていない:4.5%」「後継者は決まっていないが候補者はいる:20.9%」でした。
後継者候補の、経営者としての人格的能力や資質を見極めた上で、後継者を決めるということは、次期社長にすることを後継者に明言し、当人がそれを受け入れる覚悟できて、それを公言する状態でなければなりません。
中小企業は経営の引き継ぎが容易なように思いますが、規模の大きな企業に比べてはるかに複雑で難しいのです。
難しいからこそ、事業承継のはじまりでは社長の率直な「自分の事業承継のありたい姿」を想像することがとても大切です。
そして、その「ありたい姿」に近づけるのが事業承継の計画や対策です。

思い描いた事業承継を現実のものにするには、経験や知識が豊かで信頼できる相談者や支援者である、私たち「しんきん支援ネットワーク」におまかせください。

※しんきん支援ネットワーク「第2回 事業承継実態調査レポート」

道内6つの信用金庫職員が約半年をかけて、2,000人以上の経営者から個別のインタビュー方式でデータを収集。本レポートはそのデータに基づいた「経営者の生の声」のレポートとなっております。